算数に興味のある方、集まれ~!!

次回、第99回は、11月26日(木)です。提案は「緑表紙」(低学年)、「数学的な考え方を育てる」(6年生)、「拡大図と縮図」です。
第100回は1月31日(日)です。内容は次回決定します。
興味のある方はご連絡ください。
みなさんのご参加をお待ちしています。
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2013年12月19日木曜日

第78回 さんまの会 報告

第78回 さんまの会 報告

日時:12月19日(木)
内容:1.提案「偶数と奇数(倍数と約数)」(5年生)
  2.坪田先生の「発展・応用の考え方③~低学年でも発展・応用 1年生の算数~」
1.提案「偶数と奇数(倍数と約数)」(5年生)
 整数は奇数と偶数に分けることができ、1~100までに同数存在します。そして、2つの整数の和や積も奇数や偶数に分けることができます。和は同数存在しますが、積は奇数が少なくなります。
 本時では、積では奇数が少なくなる理由を説明させます。その過程で、表や図を使うことの有効さを実感したり、言葉の式に表して決まりを一般化したりすることが期待できます。
 本提案は、数の組み合わせで答えのきまりを発見できる学習に活用できます。例えば、計算の工夫では、「25×12」「25×16」「25×20」のように乗数が4ずつ増えると積は100ずつ増えるきまりを見付けることができるのです。なぜ乗数が4増えると積が100増えるかを考えることで、関数的見る力や理由を解明する力、数感覚などを育てることも期待できると考えることができました。

2.坪田先生の「発展・応用の考え方③ ~低学年でも発展・応用 1年生の算数~」
 78はどのような数でしょうか? 「10が7個と、1が8個集まった数」と答えるでしょう。しかし、「10が6個と、1が18個」でも間違いではありません。十進位取り記数法では1つ目の解答が好ましいですが、くり下がりのあるひき算では二つ目の解答のような見方もできなければなりません。教師の期待する答えを一問一答式に扱うのではなく、様々な答えを認める授業を扱うことも大切です。答えが1つに決まらないオープンエンドな扱いをすることで、子どもの発展的・応用的思考を促すのに役立つと考えられます。
 オープンエンドな扱いは、算数的活動の中でも「探究的な活動」につながります。1年生であれば、10×10の100マスの数表に潜むきまりを発見させます。「横に見たとき1ずつ増える」「縦では10ずつ増える」「縦のとき一の位がいつも同じ数字」「横に見ると十の位が同じ数字」など見付けるでしょう。そのような自由な見方を奨励することで、子どもの発想はさらに広がることが期待できます。「左上から右下に斜めに見ると同じ数字が並んでいる」「十の位が1増えて、一の位が1減るとも見える」「右上から左下に斜めに見ると一の位と十の位の和がどこも9になる」「ある数を真ん中にして、上下の数をたした数と、左右の数をたした数は同じ」などの発見が期待できます。1年生なりの言葉なので、教師や友達の助けを借りながらであるが、このような見方を認める指導を積み重ねることで、2年生以降の九九表の見方や問題解決にも生かせることが期待できると考えることができました。

2013年11月20日水曜日

第77回 さんまの会 報告

第77回 さんまの会 報告

日時:11月20日(水)
内容1.提案「拡大図・縮図」(6年生)
  2.坪田先生の「発展・応用の考え方②~低学年でも発展・応用 1年生の算数~」
1.提案「拡大図・縮図」(6年生)
 さんまの会では「関数の考え」を育てる連続的指導について、3年間研究してきました。今年度は特に「子どもが依存関係に着目すること」を重点に取り組み、夏の日数教でも発表しました。
 「子どもが依存関係を見付けるための仮説」として、以下を考えました。
①問題や発問を工夫する
・問題場面だけ示して、依存関係は示さないで発問する。
・条件不足や条件過多で提示して、不足する情報を質問したり必要な情報を選択したりする。
②場面や資料を整理させる
・どんな数量や図形が表れていて、求めたい数量や図形は何かを整理させる。
・数量や図形を順序よくならべ、前後関係や途中にあたる数量や図形を考えさせる。
・共通する項目でそろえたり関連付けたりして、数量や図形を見直させる。
③置き換えて考えさせる
・求めたい数量や図形は、何によって決まるのかを考えさせる。
・求めたい数量や図形を、別の数量や図形に置き換えてとらえさせる。
・置き換えて見付けたり、比較したりする。
 本提案は、本研究の一環として「拡大図と縮図」の導入で取り組もうとするものです。
 本時の目標は、「直感や図形を重ねる操作を通してとらえた『同じ大きさの平行四辺形』を図形の構成要素である辺の長さの比や角の大きさに着目してとらえ、大きさの違う形どうしはどれも辺の長さの比と角の大きさが同じであることに気付く。」です。
 授業のはじめにお菓子作りに使われるクッキー型セットを見せるアイデアは、形が同じで大きさが違うものを「同じ形」として直感しやすい教材として魅力的でした。
 その後、複数の平行四辺形を提示し「同じ形」を選び出します。違うものの中から共通するものを見出す力は、「依存関係に着目すること」を使っています。子ども自らこのような視点で物事を見る経験が、「関数の考え」を育てることになると考えられます。
 次に、「同じ形」と判断した理由を説明させます。具体物を観察や操作、測定などして調べることで、「同じ形」と判断できる理由を明らかにしていくのです。説明を通して「辺の長さの比や角の大きさに着目して、どれも同じである」ことを定着させます。
 授業を通して大切にしなければならないことは、「子どもの思考の流れにそうこと」「子ども自身に問いが生まれること」に配慮して指導することの大切さです。教師は、そのための準備と臨機応変な対応ができるようにならないといけないと、改めて考えることができました。

2.坪田先生の「発展応用の考え方② ~低学年でも発展・応用 1年生の算数~」
 「式」は単に答えを求めるだけでなく、場面の様子を表現したり答えを求める過程を表現したりするものとして指導することが大切です。そのような指導を継続することで、式を読み取って、対応する具体的な場面や数量の関係をとらえることができるのです。
 例えば、「同じ答えになる式」を考える授業です。式を無造作に集めて提示したとき、「きちんとならべてみたい」「何かきまりがないだろうか」という発想を促すことで、「見方・考え方・表し方」を身に付けさせることができます。
 また、サイコロなど身近な素材を使って授業することで、日常事象を見る目を変えていくことにも配慮したいものです。サイコロの目のきまり、切り開いた(展開した)ときの形などに着目し、発展的に素材にかかわる姿勢を育てることが期待できます。そのために、子どもが作業によって確かめられる機会を設けることも重要です。
 答えを求められる授業ではなく、答えに至る「見方・考え方・表し方」などの指導の大切さを改めて考えることができました。

2013年10月22日火曜日

第76回 さんまの会 報告

第76回 さんまの会 報告

日時:10月22日(火)
内容:1.「かけ算(2)」(2年生)
    2.坪田先生の「発展応用の考え方① ~低学年でも発展・応用 1年生の算数~」

1.「かけ算(2)」(2年生)
 「数学的な思考力・表現力を育てる指導法の工夫」を主題にする目黒区算数部低学年部会の指導案について話し合いました。
 2年生の単元で、本時の問題は「かけ算を使って●の数を求める式を考えよう」です。
 ●印は長方形の一部が欠けたように並んでいます。●印の個数を求めるには、2つの長方形に分割して足したり、大きな長方形と見て欠けている部分を引いたり、●印の位置を移動して求めやすい形(並び方)に変形したりする方法が考えられます。子どもがこれらの求め方を発想しやすくするために、徐々に●印の並んでいる様子を見せたり、●印を方眼紙に重ねてかいたりするアイデアが出されました。
 また、思考力・表現力を育てるために、自分の求め方を式や図に表すだけでなく、友達の考えを式や図から読み取ることも大切にします。そこで、ひとつの考えを複数人で説明することを展開に盛り込みました。
 提案者からは、時間配分や扱う数値、まとめ方などの質問がありました。授業者は6種類の求め方を計画していますが、全ての求め方を扱うことにこだわらず、子どもに考えさせたい求め方に軽重をつけることの大切さや教師の展開の心構えなどが話題になりました。
 いずれも「かけ算」を使って求めます。子ども自身が「かけ算」の見方で解決するように提示することや、「まとまりを見付けること」と「まとまりがいくつあるか分かること」で、効率よく求められるというよさに気付く展開をすることが、かけ算の単元として大切であると考えることができました。

2.坪田先生の「発展応用の考え方① ~低学年でも発展・応用 1年生の算数~」
   
 今回から「発展・応用」の視点で、教材や指導などを考えます。
 「基礎・基本」と「発展・応用」は、四字熟語のように一組にされることが多いですが、「基礎と発展」「基本と応用」という見方で教材や授業を見直すことで、気付くことがあります。つまり、「基礎と発展」では、基礎は家の土台であり、発展はその上に建てられる家です。さらに、発展したものがしっかりすると、それが基礎となり、今の家の上にさらなる建物が建てられます。一方、「基本と応用」では、基本は建物の柱のように下から上まで貫き通している一本の中心的支えと言えるものです。応用はここに枝葉を広げていくものです。このように教材や授業を見直すと、今日の指導はどこに位置するのか、明日の授業を成り立たせるには今日は何をすればよいのかなどが見えてきます。
 今回は、1年生の算数を例に、低学年でも取り組める発展・応用を考えました。具体的には「いくつといくつ」「形づくり」です。知識や技能を身に付けさせるだけでなく、数や図形の並び方を見たり作ったりして考えさせることで、数の不思議や図形感覚、関数的な見方などを学習することができることを考えることができました。

2013年9月12日木曜日

第75回 さんまの会 報告

第75回 さんまの会 報告
 

日時:9月12日(木)
内容:1.提案「体積」(5年生)
    2.実践報告「あみだくじのひみつ」(5年生)
    3.報告「日数教(山梨大会)」
   
    4.坪田先生の「基礎基本を学ぶ授業づくり ~文字を使った式~」

1.「体積」(5年生)
 「数学的な思考力・表現力を育むために ~楽しく基礎基本を身に付ける指導の工夫~」を主題にする校内研究の指導案について話し合いました。
 5年生の単元で、本時の課題は「直方体を組み合わせた形の体積の求め方を考える」です。
 問題の理解や解決のために、1㎤が見えるように線を引いたり分割したりできるような具体物を用意することを計画しました。どのような具体物が子どもの思考力を育てるのに有効かを話し合いました。1㎤が見えることで単位体積のいくつ分かを考えられることや、1㎤ブロックで求めたい立体の体積を作ることで体積を考えられるなどのアイデアが出されました。
 習熟度別クラス編成の際の課題や問題の差別化も話題になりました。研究で目指す子どもの姿は、「見通しをもち、筋道を立てて自分なりに答を出そうとする子」「自分の考えを整理して、順序立てて説明する子」です。それぞれの習熟度別クラスで、目指す子どもの姿に到達できることを目指します。学力に応じて、筋道立てて説明できるようにするために小集団で話し合う活動を取り入れたり、適応問題で身に付けた基礎基本を生かしたりすることを盛り込みました。
 教師がまとめたり学習感想を形式的に書かせたりするのではなく、適用問題に取り組むことで大切な考え方を再確認できることや、教師の筋道だけに陥らず、子どもが必要感をもつことの大切さを考えることができました。

2.実践報告「あみだくじのひみつ」(5年生)
 前回第74回で提案していただいた指導案の実践報告です。
 あみだくじのスタートとゴールが入れかわるとき、縦線を増やしていくと横線は最低何本必要になるかを考えます。魅力ある指導案で、前回の会では様々な意見が出されました。実際の授業では、子どもが記号化しやすいように頭文字を50音にしたり、考えが広がるように子どもの机にネタを仕込んでおいたり、、、様々な工夫がされていて、さらに魅力ある授業だったことが伝わりました。

3.報告「日数教(山梨大会)」
 8月に行われた日数教山梨大会で、さんまの会が発表したことを報告しました。
 「関数の考え」について3年間取り組んできて、テーマを決めて取り組むことが算数科や子どもなどの理解を深めることに有効であることを改めて考えることができました。

4.坪田先生の「基礎基本を学ぶ小学校算数の授業づくり ~文字を使った式~」
 低学年は□が数の変わりになっていることを理解しにくく、単に解答欄と見る子が多い。問題や数値によって□にあてはまる数が変わったり関係を表したりできることを理解するには、4年生で□や△を使った式や、6年生で文字を用いた式を学習し、積み上げる必要があります。中学校では文字式を扱うことが多くなるので、小学校で素地的指導を十分に行うことが、なだらかな接続を可能にします。そこで、小学校教員が中学校での指導について理解することは有効です。文字式を話題に、中学校にまで系統性を広げて指導することの大切さを考えることができました。
 今回で「基礎・基本」は終了です。次回からは「発展・応用」が始まります。

2013年7月23日火曜日

第74回 さんまの会 報告

第74回 さんまの会 報告

日時:7月23日(火)
内容:1.「あみだくじを使った問題」(5年生 トピック)
    2.坪田先生の「基礎基本を学ぶ授業づくり ~場合の数~」

1.「あみだくじを使った問題」(5年生 トピック)
 算数好きに育てるには、子どもの心に「ハテナ?」が生まれ、「ナルホド!」と新しい世界が見える爽快感をたくさん味わわせることが大切です。そこで、「あみだくじ」を使った問題を考えました。
 「あみだくじ」は縦横の線だけでできる簡単なくじですが、置換、1対1対応などの関数的な要素がたくさん含まれており、その中に潜む数理はとてもおもしろいものです。
 本時は、「条件に合うあみだくじを完成させるのに、横線が最低限何本必要か」を考えさせます。例えば、縦線だけひかれたあみだくじの上側にABCの順に並んでいたら、下側には上段とは反対にCBAの順にたどり着くように必要な横線をひいて、あみだくじを完成させます。
 このような条件で、あみだくじの縦線が1本→2本→3本→4本→5本…と増えていくとき、横線の数はいくつになるかを考えさせます。あみだくじをかくなどして筋道立てて考えていくと、依存関係を見出したり、きまりが成り立つ根拠が見えたりします。演繹的に考えることは難しくても、図や表、式に表して帰納的に考えることで、きまりの仕組みを理解することができます。関数的な考え方・見方を通して、「ハテナ?」が「ナルホド!」に変わる爽快感を味わう瞬間です。
 本会では、参加者も子どもと同じように問題に取り組みました。身近で考えやすいあみだくじを操作することで、混沌としていた見方や考え方が整理され、教材のおもしろさや算数のよさを実感することができました。また、解決方法がいくつもあり、考える楽しさや教材のさらなる可能性を感じることができました。

2.坪田先生の「基礎基本を学ぶ小学校算数の授業づくり ~場合の数~」
 「場合の数」の学習では、具体的な事柄の起こりうる場合を調べるために、落ちや重なりがないように順序や組み合わせなどに配慮して規則正しくならべたり、整理して見やすくしたりすることができるようにします。
 教科書では、効率よく考えられるように、例えば、「4つの数をならべてできる数は全部でいくつでしょう。」を考える際、あるひとつの数を先頭にして残り3つの数の並び方を考え、その4つ分で答えを求めます。効率的で身に付けさせたい方法ですが、「起こりうる場合」全てを調べているわけではありません。そこで、「このとき、10番目に大きい数は何でしょう。」と問題を工夫することで、落ちや重なりなく調べる必要がでます。
 効率的な考え方にすぐたどり着くのではなく、四苦八苦の試行錯誤を経験することで、算数のよさを実感したり、見落としがちな考え方を子ども自身が発見したりできると、改めて考えることができました。

2013年6月26日水曜日

第73回 さんまの会 報告

第73回 さんまの会 報告

日時:6月26日(水)
内容:「関数の考え(さんまの会の日数教での発表について)」

1.「関数の考え(さんまの会の日数教での発表について)」
 「『関数の考え』を育てる継続的指導」に取り組み、今年度で3年目になります。8月4日(日)の山梨大会での発表にむけて、これまでの取り組みの報告や今回の発表の検討をしました。 
 「関数の考え」を指導する単元は、第4学年「変わり方調べ」、第5学年「比例」、第6学年「比例・反比例」等があります。しかし、それらの単元だけでは、「関数の考え」を子どもが身に付けることは難しいと思います。規則性に着目したり、発見したきまりを使って問題を解けるようになったりしても、そのよさを感じることは短時間の学習ではできないでしょう。「関数の考え」は、特定の単元や学年で指導するのではなく、低学年から継続的に指導していく必要があると考えています。
 1年目は、低学年を含む全学年全領域で関数の考えを育てる必要性や教材の可能性を提案しました。教科書の問題にアレンジを加え、「関数の考え」を育てる教材に変えていく視点や展開例などを紹介しました。
 2年目は、1年目の提案を引き継ぎ、年間指導計画の作成・実践に取り組みました。また、どれほど「関数の考え」が子どもに身に付いているかを調査問題で調査することなどをしました。
 そして、3年目の今年度は、「依存関係に着目すること」について重点を置いて取り組んだことを発表します。
 提案者は、「関数の考え」を「依存関係に着目すること」「関数関係を見つけたり、用いたりすること」「関数関係を表現すること」「見つけた関数関係の仕組みを考えること」の4つで捉えています。いずれも大切に指導しなくてはなりませんが、その中でも「依存関係に着目すること」に着目しました。問題場面の多くの数値などの中から、いずれに依存関係があるかを見抜けなければ、きまりを使って問題を解決することにはつながらないからです。依存関係を見付けさせる手立てとして、「場面を整理する」「求めたい数値を導き出すために必要な数値を見付ける」「依存関係を調べる」ことを考えました。その実践例として、第3学年「円と球」、第5学年「正多角形と円」、第6学年「速さ」を検討しました。
 「関数の考え」を育てることは、子どもが算数や身の回りの事象を能動的に見る力を育てることにつながると考えます。与えられた問題や事象を受けるだけでなく、何かと関係付けて考えたり原因を突きとめたりする楽しさを実感することができるからです。本会を通して、改めて「関数の考え」の魅力を考えることができました。

2013年5月13日月曜日

第72回 さんまの会 報告

第72回 さんまの会 報告

日時:5月13日(月)
内容:1.「分数のわり算」(6年生)
    2.坪田先生の「基礎基本を学ぶ小学校算数の授業づくり ~平均~」

1.「分数のわり算」(6年生)
 「子供が生き生きと学習する算数授業」を研究主題に取り組んでいる校内研究の指導案を検討しました。単元は、6年生の「分数のわり算」です。主張は、以下の2点です。
  ①「分数のわり算を同分母の分数から導入する」
  ②「分数のわり算の計算の仕方から導入し、問題作りを通して意味と関連づける」
 教科書では、「3/4dLのペンキで2/5㎡塗れました。このペンキは1dLでは何㎡塗れるでしょうか。」のような異分母分数を扱った問題から始まります。しかしこの問題は、子どもが想像しにくい場面です。また、分数÷分数は「ひっくり返してかける」とすぐに一般化してしまうと、多様な見方ができなくなる恐れがあります。
 そこで、同分母分数から導入して、子どもがイメージしやすくすることを考えました。本時の問題は、「4/5÷2/5の答はいくつになるか」です。解き方は、分子÷分母で少数にする、被除数と除数に同じ数(5)をかけて整数にする、単位にする(4/5は2/5(単位)が2つ分)などです。いずれも計算の約束などの既習事項を使っています。このように、文章問題の場面理解や演算決定の前に、計算の仕方を考えさせるのです。同分母同士のわり算を考えることで、その後の異分母同士でも生かせる考えを導くことをねらっています。
 異分母同士であっても通分すれば同分母同士にできることから、解くことができます。しかし、「通分して単位分がいくつ」という解き方は、「わる数を逆数にしてかける」より煩雑になります。さらに追究して、「わる数を逆数にしてかける」まで子どもが考えて一般化する指導の手立てが必要ではないかという意見が参加者から出ました。様々な意見を統合して、「分数のわり算はわる数を逆数にしてかける」を子どもが自力で説明できるように育てたいものです。
 また、分数のわり算は問題づくりにも難しさがあります。連続量と分離量、等分除と包含除などにも配慮しなければならないからです。問題場面としてあり得ることかを考えながら問題づくりをすることは、複雑に入り組んだ事柄を整理する力も求められています。総合的な力を問われるものですが、教師側の手立ても十分計画されている必要があると考えることができました。

2.坪田先生の「基礎基本を学ぶ小学校算数の授業づくり ~平均~」
 5年生の量と測定領域では、「測定値の平均」について指導します。これは、いくつかの量や数を等しい大きさになるようにならしたもの。平均=合計÷個数のことです。
 一方、6年生の数量関係領域では、「代表値としての平均」について指導します。ある集団同士をくらべるとき、個々の数値を比較するのではなく平均値をその集団の代表としてくらべます。このような学習を通して、資料の平均の理解を深めるのです。
 平均には、「相加平均」「相乗平均」「調和平均」などがあります。また「平均寿命」など身近に使われることもあります。

2013年4月16日火曜日

第71回 さんまの会 報告

第71回 さんまの会 報告
日時:4月16日(火)
内容:
1.「ハンズオン・マスを通して「直方体・立方体」を動かして、見て、考える授業」(4年生)
2.坪田先生の「基礎基本を学ぶ小学校算数の授業づくり ~対称な図形(点対称)~」

1.「ハンズオン・マスを通して「直方体・立方体」を動かして、見て、考える授業」(4年生)
 新学習指導要領から、「直方体・立方体」は6年生から4年生へ2学年分も下がって移行されました。ところが、教科書に書かれている事柄はほとんど変わりなく、「この学習で4年生は理解できるのだろうか。」と疑問をもったことから、発表者はより一層具体物を取り入れ、ハンズオン・マスな指導を考えました。ハンズオン・マスには「動かして考えることができる(動的なよさ)」や「見て考えることができる(視覚的なよさ)」などのよさがあります。実際に手を動かしながら立体を見て、考えて、学習を進めていくことにしました。本提案はその授業実践です。
 子どもたちが立体図形を「仲間分けできる」「イメージできる」「作れる」「書ける」「おもしろいと感じることができる」ことをめざした実践について、参加者もハンズオンしながら会は進みました。
 ①「チャンスは1回だけ」
 直方体や立方体を作るのに必要な面(パーツ)を選んで、立体を作ります。向かい合う面が合同であることから面を重ね合わせたり、組み立てやすいように展開図のように並べたりする様子が実際の授業で見られましたが、参加者にも同様の様子が見られました。子どもだけでなく大人でも、実際に具体物を使って動かしながら考えると、同様の思考過程をたどることが分かります。このようなことから子どもの思考を想像したり必要な手立てを考えたりして、教材研究ができるのだと思います。
 ②「はさみで切ってみよう」
 組み立てた直方体や立方体の辺を切り開きます。すると、展開図ができます。学級全員のを持ち寄ると、同じ立体を作ったのに展開図が違うことに気付きます。中には似通った展開図もあり、一部を動かせば同じ展開図になります。しかし、その一部を動かしていいものかどうか・・・。それを考えることで、つながる辺を見付けることができます。また、切り開いたら運悪く切り離れてしまうこともあります。切り離れてしまったものはどこにつなげばよいのか。それを考えることもつながる辺を考えることになります。切り離れてしまったことが一見失敗に見えて、実は大事な学習に生かされることは、子どもの学習意欲を高めることにもつながると思います。
 ③「頂点(辺)の数はいくつ?」
 展開図では12個の頂点が、立体に組み立てるといくつになるか。実際に組み立てても考えられますが、辺が3本でひとつの頂点が作られることにも気付くことができます。
 授業後、平行と垂直関係に着目した立体の理解が難しいことや、見取り図での指導では子どもの考えを生かしにくいことなどの新たな課題が見出せました。
 具体物の操作は子どもの理解を助けるとともに学習意欲を高めることにもつながります。めあてをもって、適切にハンズオン・マスを取り入れることの必要性を考えることができました。

2.坪田先生の「基礎基本を学ぶ小学校算数の授業づくり ~対称な図形(点対称)~」
 点対称はなぜ美しいと感じるのでしょうか。それは、図形が回転していると感じさせるからです。点対称な図形は180度回転してもとの形と同じになる図形ですが、正三角形のように180度でなくても回転してもとの形と同じになる図形はあります。このような回転対称な図形のうち、180度に限定したものを特に点対称とよんでいます。そして、点対称も線対称と同じように「変化はした。でも同じ。」な図形です。
 点対称な図形でも線対称と同じように性質を調べたり作図したりします。線対称と比較する事で、性質も際立ちます。
 対称性は、図形だけでなく、他の領域や学習を見直す観点にもなります。例えば、量と測定領域のの面積の学習では、線対称な図形では対称の軸が面積を二分します。また、点対称な図形の面積を二分する直線を考えると、全て対称の中心を通ることが分かります。数と計算領域では、九九表の数値と位置が右下がりの斜め線を対称の軸とする線対称であることに気付きます。さらによく観察すると、一の位の数字が25を対称の中心とする点対称になっていることにも気付きます。図形の見方を豊かにする観点として「線対称」「点対称」を学びますが、他領域や他教科、日常にも同様の観点を生かす活用力を育てることができます。教師が対称性の可能性を理解して指導することは大切だと考えることができました。

2013年3月18日月曜日

第70回 さんまの会 報告

第70回 さんまの会 報告
日時:3月18日(月)
内容:
1.「わり算の筆算」(3年生)
2.「ミャンマー報告」
3.坪田先生の「基礎基本を学ぶ小学校算数の授業づくり ~対称な図形(線対称)~」

1.「わり算の筆算」(3年生)
 わり算の筆算は、「たてる」「かける」「ひく」「おろす」の手順や、位をそろえて書くことなどの指導がされます。しかし、筆算では「わり算」をしているはずなのに「かけ算」や「ひき算」も入っていて、子どもには抵抗感が大きいものです。そこで、操作を取り入れて「かけ算」や「ひき算」があることに気付かせ、一般的な筆算へ移行する工夫をします。こうすることで、計算の仕方の過程の意味を考えさます。本提案はその授業実践です。
 横に3個ずつ●印の並んだドット図(アレイ図)を素早く見せ、「何段あるでしょう?」と問います。「ゆっくり見せてほしい」「全部で●印は何個か教えてほしい」という声があがります。全部の個数を教えてほしいという子は、横に3個ずつ並んでいるから全部のドットが分かればわり算で何段かを求められると考えています。つまり「□÷3」で求めようとしています。このとき「「□-3-3・・」をして、何回ひいたかで分かる。」という子もいます。全部で27個であることを伝えると、いずれの考えも9段になり、同じです。このとき、3個ずつ分ける操作や3個ずつひく操作を見せて、わり算とひき算の関係を示し、同じことをしていることに気付かせます。
 つぎに、●印が54個のときを考えさせます。わり算「54÷3」で表せますが、三九(さんく)27を超えているので九九では求められません。しかし、ひき算「54-3-3-3・・・」で考えると、18回引けることから18段であると求めることができます。このことから「54÷3=18」と操作を通して理解することができます。授業では、「3個ずつひくのではなく、10段まとめれば30個になるから、54-30=24で、残り24を3個ずつひけばいい。」と考えることができました。これは、わり算の筆算につながる考え方です。
 操作を取り入れることで、わり算とひき算をつなげて考えたり、わり算の中に潜むひき算の意味を理解したりすることができると考えることができました。

2.「ミャンマー報告」
 坪田先生がJICAから委託され、民主化の進むミャンマーへ行かれました。日本の教育制度や授業について講演されたり、小学校や教員養成学校を見学されたりした報告をしていただきました。
 小学校の授業では、「教えて覚える事柄と考えて分かる事柄は違う。」と感じられたそうです。このことを十分に踏まえて指導に当たることは肝要です。
 教員養成学校の先生は、「大切なことは、例を何回も出すこと、教え方も自分で準備すること、子どもの間違いを見付けて対応すること」を強調していたそうです。子どもに考えさせるよりも先生が説明する授業のように感じました。
 日本の研究授業や協議会は、世界でも注目を集めていると聞きます。現場の教員が互いに切磋琢磨し、よりよい授業を作り上げようとするシステムを取り入れようとする動きもあるそうです。

3.坪田先生の「基礎基本を学ぶ小学校算数の授業づくり ~対称な図形(線対称)~」
 図形を色々な観点から見たり分類したりする学習は低学年からしています。例えば、「直線で囲まれた形」という観点では、「3本は三角形。4本は四角形。」です。さらに、「辺の長さ」では、「二等辺三角形」「ひし形」など。「直角」では、「直角三角形」「長方形、正方形」などです。こうした図形の見方や概念を別の観点から見直すと、今まで違う種類の図形と認知していたものが「同じ形」として見直せるようになります。つまり、既習の図形を対称性という新しい観点から考察し、図形についての理解を深めるのです。
 線対称は「ひとつの直線を折り目にして折り重ねたとき、両側の部分がぴったり重なる図形」です。このような形を子どもは、整っている形、美しい形という直感的なとらえ方をします。なぜそのように思うのかと問い返すことで、左右が同じになっているからとか、折るとぴったり重なるからなどの算数的な表現が加わることが期待できます。
 学習素材では、「ふたなしの箱の展開図」や「アルファベット」が考えられます。観察して調べたり、作って折ってぴったり重なったりすれば、線対称な図形です。
 操作していると、折るのではなくひっくり返して合同な形ということにも気付きます。ひっくり返して動かしたのに、動かしていないように見える。「変化はした。でも同じ。」と言われる所以です。
 線対称な図形の性質を調べ、その結果を生かして作図する方法も考えさせます。さらに、半透明アクリル板で作図することや、身の回りにある線対称な図形を探すことも、楽しい学習です。
 たくさんの話題や素材を紹介していただき、さっそく授業に生かしたいと思いました。

2013年2月19日火曜日

第69回 さんまの会 報告

第69回 さんまの会 報告
日時:2月19日(火)
内容:
 1.「2けたのかけ算」(3年生)
 2.「第28回小学校算数教育研究全国(広島)大会」レポート
 
 3.「小学校のかけ算 えっ?順番が違うと「バツ」」新聞記事より
 4.坪田先生の「基礎基本を学ぶ授業づくり~拡大図・縮図~」
1.「2けたのかけ算」(3年生)
 本単元で整数の乗法は完成され、4年生以降の整数の除法、小数・分数の乗法・除法へと発展します。
 乗法筆算の課題のひとつは、乗法の意味や計算の意味が薄れ、機械的な計算(アルゴリズム)に重点が置かれる傾向にあることです。筆算の誤答の多くは、意味理解が不十分であるためにおこります。そこで、乗法のまとめとして本単元を見直し、筆算形式がどのような考えで成り立っているかを確認しながら習熟する指導について、提案がされました
 例えば、「42×23」では、被乗数と乗数を位ごとに分けて「(40+2)×(20+3)」を計算し、「40×20+40×3+2×20+2×3」の部分積を出します。ここでの「2×20」の計算が意外と子どもには理解しにくいようです。「~の10倍」や「~を10で割る」などの既習事項の見直しを意識しながら、つまずきを克服する指導の必要性を考えました。
 算数は系統性の強い教科です。現在の学習は以前のどこかとつながり、現在の学習は以後のどこかとつながります。子どものつまずきには既習事項を見直す必要があります。また、今後の学習を見通すことで確実に身に付けるべき内容や考え方に気が付き、教師の指導も変わってきます。
 例えば、「倍」という言葉を「2×9を2の9倍と言います」のように、これまで「9個分(分離量、累加)」としていたものを「倍」と言い換えてよいことを理解できることで、その後、小数や分数(連続量)に数を拡張したときの理解や説明の手掛かりになります。
 提案では、「4×30」を「4×3×10」や「4×10×3」のように工夫して計算することや、「21×13」は「21×10」より大きくなると見通しを立てること、筆算で部分積を書かせることで計算の仕組みを理解できることなども話題になり、子どもが段階的に理解したり不思議を見付けて解き明かしたりしていく授業の大切さを考えることができました。

2.「第28回小学校算数教育研究全国(広島)大会レポート」
 「言語活動を生かした算数授業-数学的な考え方の育成をめざして-」をテーマに、全学年18学級の公開授業が行われました。言語活動を生かした授業展開、発問や学び合いの形態、算数的活動を意識した課題など、現在の、そして、これからの算数授業についてのアイデアが多く提案されました。
 「算数科において言語活動を充実させることは、それ自体が目的ではなく、考えたことを言葉や記号に表すことによって、考えを整理したり、表現された言葉や記号からさらに考えを進め深めたりするなど、よりよく考える力を育てていくことに本当の目的がある。」という言葉が印象に残ったという発表者の話に、授業を見直すきっかけを考えることができました。
3.「小学校のかけ算 えっ?順番が違うと「バツ」」新聞記事より
 「8人に鉛筆をあげます。1人に6本ずつあげるには、全部で何本いるでしょう。」という問題。小学校では「6×8=48」が正解と教えます。問題文に出てきた順に数値を使うのではなく、式の意味を大切にして「1つ分×いくつ分」の約束を守るからです。
 この計算の順序に疑問を持った保護者がブログに書いたところ、大きな反響があったそうです。
 この件について文科省は、「正しい順序は決めていない。学習指導要領にも順序の記述はない。順序の指導については学校現場に裁量があり、コメントする立場にない。」との回答だったそうです。
 教科書には「1つ分×いくつ分」と明記されていますが、交換法則をつかえば答えは同じなので、答えを求めるだけであればこだわる必要はないのかも知れません。しかし、式は算数の言葉であり、ルールを決めて表さないと混乱します。わり算の等分除・包含除の考え方にも影響します。
 この論争は41年前にも新聞記事になっているそうです。日本では「1つ分×いくつ分」の順序ですが、海外では逆の順序で、水泳などの競技で「4×100」リレーなどにも現れています。
 指導者はこのようないきさつなども理解して指導することが、子どもに分かりやすく指導するために必要であると考えることができました。

4.坪田先生の「基礎基本を学ぶ小学校算数の授業づくり ~拡大図・縮図~」
 「同じ形」の学習は低学年から始まりますが、5年生ではこれを「合同な形」と言い換え、構成要素を調べたり作図したりします。
 「拡大図・縮図」は、大きさは違っても形が変わらない図形です。つまり、対応する辺の長さの比と対応する角の大きさは変わりません。図の構成要素を調べたり作図したりするとき、一方を「1」と見て、もう一方はどのような関係にあるかを柔軟な視点で見られるようになることが大切です。
 ここでの学習は、面積比や体積比の基礎となり、中学校での学習ともつながります。「2倍の拡大図」の面積を求めるとき、2倍ではなく4倍であることをスムーズに理解するためには、「拡大図・縮図」で具体的イメージをもって理解させなければならないと考えることができました。

2013年1月21日月曜日

第68回 さんまの会 報告

第68回 さんまの会
日時:1月21日(月)
内容:提案「はこの形」(2年生)
 「構成要素の個数や形についてのきまりを見付けること」と「ストーリーのある活動を展開すること」を本単元で取り組んでみたいこととして指導案を検討しました。
 面や辺、頂点など構成要素の数や形は、単に教えてしまう授業では覚えるだけになってしまいます。具体物を操作して数えたりきまりを考えたりすることが、空間を認識したり論理的思考力を育てたりすることにつながります。様々な箱を調べたり平面と立体を比較したりしながら帰納的に考え、構成要素のきまりを見付けられるように展開します。ここでの学習が4年生の直方体・立方体や5年生の立体に生かされると思います。
 「ストーリーのある活動を展開する」とは、子ども自身に「箱をかきたい」「数を調べたい」「形や長さを調べたい」「箱を作りたい」など自発的に活動に向かわせることです。活動の目的が分かり、考えることを楽しませたいのです。教師が教えるのではなく、子どもが活動を通して学ぶことは、本単元でもやはり大切であると思います。
 参加者から「立体をつかみにくい自身の経験」について話がありました。実際に触ったり操作したりすることが、そのような理解しにくい状態を避けて理解を深めたり、学習を楽しいものにするのだと分かりました。
 また、盲学校やモンテッソーリでの教材からもヒントを得ることができました。
 竹ひごや粘土を辺や頂点に見立ててはこの骨組みを組み立てることに疑問もありましたが、話し合いを進めていくうちに、その活動の意味や価値を見出すこともできました。それは、平行や垂直を見やすくすることができるばかりでなく、骨組みだけでも面を想定して立体としてみる力や立体を組み立てるために必要な柱(辺)を想定する力なども育てることができることなどです。体験するからこそしっかり理解できるのだと、改めて学ぶことができました。